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目に見えない迷路の中を、迷うのではなく、正確に辿っていると、不思議と自由を感じる。Library - original jazz band official site

 日記                   

 

 

2014.3.9

 

「高い壁27

 

赤ん坊の様だ、と思う。水中で膝を抱える。魚のイメージ、巨大な、深海魚の様な、古代の魚。

 

その魚が、この暗闇の外苑を、半時計回りに周回している。見えないけど、その様に感じる。

 

再び心臓の音、暖かい眠り。

 

魚が向かって来る。突き飛ばされる。戸惑う。ここは自分の為の場所だと思っていた。それとも、自分の為の場所について、何も分かっていないのだろうか?おそらく後者なのだろう。

 

再び、目が真っ白で、骸骨の様な魚に、突き飛ばされる。一瞬、あのもの凄い牙で、殺されてしまうのではないか、と思う。だけど、魚は、古代から生きていて、石の様になっており、口を自由に開く事は出来ないみたいだ。通り過ぎる時、よく見ると、その身体には、苔の様な物が生えている。

 

再び突き飛ばされる。下にも、上にも行けない。徐々に横方向の、暗闇の深みに、流されて行く。魚が、周辺近くにある、流れの方へと、押しやっている。再び突き飛ばされる。相当な距離があるのだろうか?中心から、周辺へと、向かっている。

 

少しずつ、潮の流れを感じ始める。今までよりも、少し水温が低い。潮の流れは、おそらく半時計回りなのだろう。再び突き飛ばされる。魚は、この流れの向こう側まで、自分を出すのだろうと思う。

 

左回りで、潮に流されつつ、魚に突き飛ばされる。

 

ふと、水流が無くなる。暗い水の中にいる。でもここは、水の中なのか、何なのか、分からない。魚はもういない。立ち上がる。地面がある事に気付く。左の方に、腹這いになって通れる隙間があるのが分かる。ここは、かなり広い空間なのだろう。しばらく、じっとして、目が慣れるのを待つ。身体の重みを感じる。「ドックン」と今度は、明らかに、自分の心臓の音が聞こえる。

 

 

2014.3.8

 

「高い壁26

 

下に潜ろうとする。何かにつっかえる様に、先に進めない。両手で水を掻くが、水圧の違い?押し戻されてしまう。

 

「ふう」と、ため息をつく。ここで、このまま寝てしまおう、という気になる。何のかんの言って、これほど、力にあふれて、居心地の良い、闇の中に居た事など、今までないのだ。寝るくらい構わないだろうと思う。

 

遠くに、巨大魚が居る感じがするが、大きく円を描いて自分の周辺を回っている感じ。巨大な、鋭い牙を持った、古代魚が、この世界の外周を回っているのかも知れない。

 

目を閉じる、同じ様に真っ暗、目を開ける、同じ様に真っ暗、目の開閉を繰り返す、心の中に、何かが染み込んで来る、今、ここで、経験した事の無い程、リラックスする、「ドックン」と心臓の音が聞こえる、自分の中から聞こえるのか、外から聞こえるのか、分からない、寝ている、と思う。

 

目を開けても、閉じても、寝ている、先には進まない、その様なコンセプトは存在しない、身体の外も内側も、心の中も外も、闇に包まれている。

 

もの凄く間隔を置いて、心臓の音が聞こえる。

 

 

2014.3.7

 

「高い壁25

 

四角い穴を、かがんで覗き込む。足元を水が流れて、穴に吸い込まれて行く。水量が増し、踝くらいの高さ。「ドン!」と背中を押されて、頭から穴に落ちてしまう。何が起きたのか?もちろん分からない。誰もいないと思っていたのに、以前、老人がどこかにいる様な、気配を感じた事を、思い出す。

 

真っ暗な中を落下する。目印も無いので、落ちている事もよくわからない。思ったより長く感じる。突然「ザバーン」と水の中に落ちる。深い。何が何だか分からないが、力がみなぎるのを感じる。以前は、自分には過剰な水だったのが、今では救いになっている。溺れる事は無さそうだ。上を見上げても、真っ暗で、どこから落ちたのか、分からない。周囲も見渡せない。

 

思い切って潜ってみると、案の定、息が苦しくならない。呼吸が出来るのでは無い。ただ、苦しくならないのだ。暫く、水中で目を閉じ、じっとしている。気持ちよく、眠ってしまいそうになる。

 

これは水ではない。何なのかは分からない。便宜的に水と呼ぶ事にする。

 

目を開いて、よく見ようとしても、どれだけ広いのか分からない。遠くに、巨大魚がいるような気もする。水面に再び浮上する事はできない。そう考えただけで、全身が反対する。下、と思う。下を見極めようとする。同じ様に真っ暗、だけど、何となく、本当にごく僅かに、闇が薄い気がする。そっちを目指すのだろうと思う。

 

 

2014.3.6

 

 

「高い壁24

 

一段と低くなった、暗くなった道を、進んで行く。もう、白い光の、開口部は見えない。

 

もし、あのまま、開口部を降りて行ったら、上下が逆さまになって、最初の砂浜か、どこか別の野外、に出たのだろうと思う。白い光は曇り空の光、だったのだろうと思う。上下逆転しているので、こちらから見ると、空が下にある事になる。薄い、下敷きの裏表を磁石で挟むかの様に、自分の地面の裏側を、地面として歩き始めるだろう。

 

だけど、今は、ここを、このまま、進む事にする。道幅が広くなってきた。螺旋の中心から、周辺に向けて歩いているから当然。広くなった分、余計に暗く感じる。再び足元が湿ってきた。再び緩い下り。

 

目の前に壁が立ちはだかっている。上まで、左右の壁と同じ、真鍮の壁が伸びていて、完全に行き止まりになっている。引き返して、開口部から出ようか?という考えそのものに、全身が猛反対する。吐き気どころではなく、バラバラになりそうなパニックを起こす。引き返そうとしなければ、その場に違和感を感じていない事に気付く。

 

落ち着くと、水の音が聞こえる。壁の、下部のどこかから、水が向こう側へ流れ出て、落下している。足元に水が溜まり始めている。水が向こうへ流れるスピードはそれ程速くない様だ。

 

2つの可能性を考える:

ー1つは、水が溜まるまで、ここにいて、浮かんで、上の方まで、行ってみる。

ーもう一つは、壁の下部の割れ目を見つけ、そこから流れとともに、向こう側へ行けるか、確認する。

 

下部を確認するのは、当然水量の少ない今の方がしやすいろう。20メートルはあるかと思われる壁の下をチェックして行く。一番右端に、かなり真四角に近い穴が開いている。隙間なんていう物じゃなくて、縦穴に近い。そこから水が下に落ちている。底は見えず、危ないかもしれない。水の量が増えてきているから、溜まってきていると勘違いした様だ。単純に、しみ出してくる水が増えているのだろう。通路が低くなった事と関係があるのかも知れない。暫く考える。

 

 

2014.3.5

 

 

「高い壁23

 

真鍮の渦巻きの中を歩く。軽いパニックの予感がする。何も考えずに、歩いて行く。道が下り坂になってきた。ある地点を境に、突然傾斜がキツくなり、地下室の入り口の様になっている。しかも下は真っ白い光で、何も見えない。地面に開いた入り口の様になっている。地下から白い光がこぼれているおかげで、辺りは余計に暗く感じる。そこに降りて行こうか迷ったが、良く見回すと、開口部は道幅より狭く、迂回できる。

 

今は先に進もうと思い、迂回する。さらに進むと、また、同じ様な白い光の入り口が二つ程、見えてくるが、通り過ぎる。

 

通り過ぎるたびに、これでいい、少し辛いかも知れないけれど、という心の声が聞こえてくる。道が少し暗くなってきたが、気にならない。先に進んで行く。

 

 

2014.3.4

 

 

「高い壁22

 

歩いて行く。暫く前から、何故、道が渦巻き状に絶えず右にカーブしているのか、その意味が、何となく分かってきているが、歩く事自体に比べて、それが分かる、と言う事の、無意味さ、そして、故に、何にも分かっていはいない、と言う事が、身に沁みる。

 

 

2014.3.3

 

 

「高い壁21

 

いて行く何も起こらない。右へ右へとカーブして行く。

 

 

2014.3.2

 

 

「高い壁20

 

歩いて行く。何も考え無いし、考える事も何も無い。

 

自分の足を、交互に前に出す。真鍮の床を踏みしめる事が、こんなに気持ち良く、楽しい事だったとは。足を交互に前に出して、歩く事が、何者にも代え難い、リアリティーになる。

 

進んで行く。自分の周囲のみ、ほのかに明るく、前後上、20メートル位は、見通せる。歩きやすい。

 

かすかに水流の音が聞こえる。

 

 

2014.3.1

 

 

「高い壁19

 

怒りを感じはじめる。やり場の無い怒り。巨大な、巻貝の様な、うずの道を、外側に向かって歩く。上はどこまであるのか、高すぎて見えない。壁も床も、全て真鍮で出来ている。

 

孤独を感じる。怒りと、孤独。どうしようもない。ここでは「歩いて進む」事しか、「数えられ」ないのだ。

 

流れがある。歩き始めた途端、足の裏が「馴染」んだり、渦巻き型の道程を外側に向かって歩いていたり、真鍮で出来ていたり、上が高くて見えなかったり、全てが流れなのだと思う。

 

足の裏が、一歩毎に、「ほど良く」沈む、2〜3センチ位。真鍮の床に柔らかく沈み、足の形に凹んで、少しだけ光っている。次の一歩を踏み出すと、足跡は元通り、滑らかで固い、真鍮の床に戻っている。その事が、励みになる。

 

更に注意すると、凹みに水が溜まっている。凹みが復元する前に、手で掬って飲む。身体の内側に、力が染み渡るのが分かる。他人の気配を感じる。この先に老人が待っている様な気がする。

 

カーブしか無い、渦巻きを、右へ右へと、外側へ向かう。すぐにでも老人が居ると思ったが、誰もいない。その代わりに、徐々に暗くなってきた。気温も少し下がった様だ。光っている足跡が、余計に目立つ。

 

足跡の水を、もう一度飲む。さっきよりも冷たいし、力も感じるのだが、少し力が強すぎる。軽い発作を起こしてしまう。それで一気に、こらえていた感情が爆発してしまい、震えながら、目を、ぎゅっと閉じる。悲しみ、怒り、恥。叫ぶまいと、我慢するが、我慢しきれずに叫んでしまう。情けなく、恥ずかしい。叫び声が、巨大な通路に、こだましてしまう。もの凄く共鳴する。ヤケクソになってもっと叫びたくなるが、こらえる。もう、そういうのにはうんざりしている。

 

周囲は独特の闇に覆われている。呼吸を整える。気分が少し悪い。足元に、水が少し、溜まっている。歩くとピチャピチャ言う程度。この水は、自分には、too muchなのだ。どこかに、地下水脈があるのかもしれない。真鍮の床の下に、水脈があるのだろうか?

 

歩く事に決めた。暗い中を、右へ右へとカーブして歩いて行く。

 

 

2014.2.28

 

 

「高い壁18

 

 

目を覚ます。眠ったのかどうかも分からない。同時に完全に眠ったのだと分かる。そして軽い吐き気がする。少しだけ仮説の様に感じる事があるが、無視する。

 

疲れを感じ、また眠りたくなる。あれ程の、血と肉の中を歩いてきたのだから、無理も無いと思う。睡魔が襲ってくる。

 

金属の床の上に倒れる様に、仰向けに横になる。素晴らしい所だ、と思う。滑らかな真鍮の曲線が、闇に吸い込まれる様に、どこまでも続いている。ここでこのまま死のうと思う。もう十分だ、と思う。こんな素晴らしい所で、真鍮に同化し、消えて無になれたら、それで満足しようと思う。身体が床に吸い付くのが分かる。再び深い眠りに落ちる。もう目覚めなくてもいい、と思いつつ、自分が、真鍮の床に沈んで行くのが分かる。沈めば良いと思う。

 

そして再び、同じ場所に、自分が、仰向けになっているのを、発見する。確かに沈んだのに、確かに眠りに落ちたのに、と思う。時間の経過が分からない。時間の経過が無いのだろうか?全てはその通りに、起こったのだと思う。全ては起きているのに、時間の経過という物が、意味をなさなくなっている。ここでは「歩く」という事によってのみ、物事が先へと進むのだ、という仮説を立てる。「歩いて進む事」それ以外は、文字通り、「数に入ら」ないのだろうか?

 

考えても仕方ない。重い次の一歩を踏み出す。足の裏が、真鍮の床に「馴染む」のが感じられる。やはり、そうなのだろう。

 

 

2014.2.27

 

 

「高い壁17

 

 

真鍮の床に横になって眠る。自分の息の音が聞こえる。コースの曲線に沿って、果てしなく壁が上に伸びている。どこまで続いているのか、分からない。広大な巻貝の中に居る様だ。身体は沈まない。息の音が心地良く、眠りを誘う。空気の音が、眠りに落ちる瞬間、わずかに聞こえる。貝殻を耳に当てた時の様な音。

 

夢を見る。夢の中で、自分は、全く夢を見ないで、同じ様に、眠っている。目を閉じても、開いても、全く同じものが、見えている。なのに、完全に休んでいる。少しだけ不安になる。考えない、理解しない、考えない、理解しない、と、心の中で、繰り返し唱える。すると、再び気分が落ち着いてきて、眠りに落ちる。先程と、全く同じ様に、自分が、同じ様に、同じ場所で眠っている夢を見る。でも、もう焦らない。現実の自分も、夢の中の自分も、徐々に意識を失い、暗黒の眠りに落ちて行く。

 

 

2014.2.26

 

 

「高い壁16

 

 

金属は真鍮の様だ。継ぎ目は無く、表面はとても滑らかに磨かれている。この真鍮の層が、円形に、肉の壁を、中心へと、押し込んでいる。

 

自分の円形のコースは、今までは、それには影響されず、結果、自分の通った道筋が、中心から螺旋を描いている。

 

そして今、円形のコースと同じ直径迄、真鍮の層が押し込んできたのだ。これより径が狭まれば、自分も中心に押し戻されてしまうだろう。一瞬不安になる。しかし、そのままのペースで、円形のコースを進む。

 

すると、自分が真鍮とぶつかるタイミングで、そのポイントに、自分の進むべき道が、真鍮の壁に設けられている事に気付く。それは、中心から描かれている螺旋のカーブに正確に従って、真鍮の層の中に続いている。

 

真鍮は、そのままの速度で、収縮を続けるのだろうか?多分、そうではなく、円のコースと同じ直径で止まるのだろう。

 

真鍮の道に足を踏み入れた途端、手にしていた、流木(であったもの)、が崩壊し、元素に分解する。

 

真鍮の螺旋状に続くコースの中を歩き始める。ひんやりとしていて、今までとは、打って変わって、気持ちがいい。少し眠りたいと思う。とても疲れている事に気付く。横になる。上を見ると、真鍮の壁が、コースのRを描き、どこまでも続いている。あまりに高く(深く)、外の光は全く届かない様だ。

 

 

2014.2.26

 

 

「高い壁15

 

温かい暗闇の中を進む。眠っている様でもある。方向感覚が怪しくなる。一定の速度で、決められた円の上を、歩いている筈だ、と思う。それに対して、中心に向けて収縮して行く壁の中を、歩いているのであれば、結果として、中心から渦巻き状に、外側に向かって歩いている、という事になるだろう。だけど、ともすると、歩いている、という感覚すら、希薄になる。手にしている流木であった物の存在が危うい。視界ゼロの肉の壁の中で、壁に同化し、消えてしまいそうになる。迷いの中、しっかりと握りしめる。

 

その危うい意識の中で、「人という存在」は「定点」の様に、実は、最初から、最後まで、移動なんかしないのではないか?というイメージに取り憑かれる。

 

人が、歩いたり、車や、電車に乗って、移動する時、動いているのは世界の方なのではないか?と思う。それが機能するということが、世界に「馴染む」という事なのだろう。

 

丁度、コンピューターのプログラムを、最初に「フォーマット」する様に、「馴染む」事によって、移動したり、他の人と会ったり、する事が、「機能・成立」する様になる。この肉体は馴染む為の「インターフェイス」なのだろう。乗り物や建物、は、この肉体というインターフェイスを前提に、作られている。

 

だけど、それ以前に、「その人のポイント=定点」という物が、時空という物差し、を超えて、存在し、それは、この世界に馴染むと言う、絶え間なく、継ぎ目無く、更新され続けている、接点、出来事、の産物である「意識」の根っこ、の様なものなのではないだろうか?

 

今、自分は、肉の壁の中を進む、という世界に「フォーマット」をし、接点を更新しながら、進んでいるのだと思う。今は「循環」ではなく、「理解」が必要なのかもしれない。とても危険な事だと知りつつ、何故なら、理解なんか出来る訳がないから。「言葉は殺し、霊は生かす」という古い教えを思い出す。仮説の形を取った、イメージなのだろう。理解からは程遠い。

 

たまらない不安定感の中、暗くて温かい肉の壁の中を進む。金属にぶち当たる。

 

 

2014.2.25

 

「高い壁14」

 

空間がおかしい。自分が、左回りのときは左側から、右回りのときは右側から、滝の音が聞こえる。方向を変えた覚えは全くないのに、自分が、右回りで進んでいるのか、左回りで進んでいるのか、分からない。

 

ただ円の内側は、血液に浸食されて、深い滝の様になっている。歩いている地面も、円の内壁も、とっくの昔に砂ではなくなっている。肉の壁から、絶えず血が滲み、流れ出し、足元を通って、円の内側に滝となって吸い込まれて行く。

 

数年前、妻が手術を受け、子宮を摘出した時の、記憶が甦って来た。

 

血は流れていなければならない、生きている限り。

 

再び、最初の壁を思い出させる様な、円柱状の中を、螺旋状に降りて行く。手にしている流木は、肉の道に「馴染み」、何かを伝えてくる、自分は先に進む事によって、それをそのまま「返」す。その循環によって、肉の深淵に、新たな道が刻まれて行く。右回りなのか、左回りなのか、分からない、空間の中を、降りている。遥か上の方には、円形に白い空が見えている。

 

循環が飽和し始める。強くも弱くもならない。それをそのまま「返」す。自ずと歩みが遅くなる。流木は既に血の通った、肉と骨、を備えた棒になっている。それは肉の壁や道に、馴染んではいるが、一体化している訳ではない。流木と自分の手も同様で、それは、こちらが握るだけではなく、手のひらの様な感覚で、ちょうど握手の様に、こちらを握り返してきていて、とても馴染んでいる。

 

その馴染みの中で、循環の感じが変化してきた。「ドックン」という、とても大きな心臓の音が、深淵に響き渡る。既に道に傾斜は無く、同じ高さの道を、どっち回りかは分からないが、安定感を持って回り続ける。

 

肉の壁が、徐々に中心に向かって収縮し始めた。なのに、道は、そのままの直径を保っている、ので、再び螺旋状に、道が壁を突き抜け始める(さっきまでは下降螺旋だったのが、水平方向螺旋になった)。

 

飽和した循環の中、斜めに角度を付けて、壁の中に、吸い込まれて行く。一定の速度で、収縮する、肉の壁には、真上から見たら、きれいな渦巻きが、道によって刻まれている筈だと思う。

 

 

 

2014.2.24

 

 

「高い壁13

 

血が滲み始める。最初は、黒く濡れた、ただの砂だった。流木で、抉られた砂の上のライン、気付くと、同じ所を何度も何度もなぞっている。その度に、彫りが深くなって行き、湿った砂が心無しか、赤っぽく見えて来た。同じ所を、ぐるぐると回り始める、大きな円を描き始め、繰り返される毎に、赤味が強くなって行く。流木の先端が赤い。

 

一周毎に溝は深くなり、出血量も増えて行く。吐き気はしない。循環している。ドクンドクンと循環している。既に血だらけだ。くるぶしまで、血に埋まっていて、足先が見えない。だけど、ちゃんと歩いている。ちゃんと歩いているし、循環しているー「沈」んでは行かない。歩き続ける。

 

膝まで血に埋まっている。考えず、理解しない、考えず、理解しない。循環している。溢れる血が、円の内側に染み込んで行く。染み込んで、砂に変化が起きている様だが、立ち止まって、観察する余裕が無い。

 

循環の中に居る。血の中に居る。流れを、そのまま「返」し続ける。ゆっくりと、腰まである血の中を歩く。流木の先で、掘っている感覚が変化する。「肉だ」と思う。

 

2014.2.23

 

 

「高い壁12

 

描くにつれて、或る感覚が、強くなってくる。流木で描く線に、特別な、繋がりを感じ始める。

 

一般的に、魂を込める、と言うが、こちらが一方的に込めるのではない、というか、意図して魂を込めるのではない、「循環」している、と、思う。ただし、それが強くなって来ているのだ。

 

流木は砂浜に吸い付き、食い込む様に一体化し、自分の手を通じて、「何か」を伝えてくる。それが自分に新たな線を砂の上に描かせる。その「何か」が、どんどん強くなり、描かれる線も、より深く、幅も広く、はっきりとしたものになっていく。両手で、力いっぱい握っていないと、流れに負けてしまう。そしてこれが肝心なのだが、ゆっくりとした、一定のペースを保たなければならない、強い流れを、そのまま「返」さなけらばならない。

 

そして、理解してはけない。その様に思う事すら、危険を伴う。解ろうとする事、それ程破壊的な事は無い。その意味では、この言葉自体が危険である。話す事、語る事、は指先が全て剃刀で出来ていて、相手を傷つけずには、触れない様な処がある。

 

 

 

2014.2.22

 

 

「高い壁11

 

流木の端を額に当て、目を閉じる、循環している。再び両足が、地面に沈み始め、目を開ける。「ぐっ」と流木を地面に押し当てる。何も起こらない。だけど、手応えの様なものを感じる。

 

感じるままに、流木で地面に線を描いていく。ちょうど見えない迷路を、正確に歩いて来たのと同じ様に、何も考えずに、素直に、ゆっくりと。

 

砂浜、流木、自分、砂浜、流木、自分、砂浜、流木、自分、そして徐々に、見えない迷路が描かれ、見える様になってくる。

 

最初は、明らかに、「気分が良くなる」という感じだけだったのが、その循環の中に、もっとずっと複雑で、繊細な、メッセージ、のようなもの、が含まれている気がする。それは決して、言葉に翻訳しようとしてはならない、流れ。

 

判読の出来ない、意味の不明な迷路を、砂の上に描いていく。

 

 

 

2014.2.21

 

 

 

「高い壁10

 

ストレスのない方向に歩き続ける。思ったよりもずっと細かく、道が入り組んでいる事が分かる。それは「海まで直線で」歩いたり、「海岸線に対して平行」に行く、といった「考え」が現実に対して、如何に乱暴であったかを示している。

 

ふと、自分が砂浜に、歩いたコースの文様、を刻んでいる事に気付く。しばらくそのまま、見えない迷路を正確に辿り続ける。

 

流木が落ちている。迷路が流木に引き合わせたのだと思う。杖の様で、直径が10センチ程、長さは1.5メートル位、白っぽく、表面はツルツルに洗われている。手に取ると、見た目よりも重く感じる。

 

地面をトンとつつくと、不思議な感触。何が不思議なのかは解らないが、この砂浜と、関連がありそうだ。もう一度地面をつつく、気分が、格段に良くなる。まだ少し残っていた吐き気がどんどんと治まっていく。身体の芯に、言い様の無いエネルギーが満ちる。

 

再度地面をつつく。明らかに地面が反応し始める。丁度砂浜の上に拡げた風呂敷の真ん中をつつく様に、つついた分だけ、周囲の砂浜が、数センチ、中心に向けて引っ張られている。

 

「馴染む」という言葉が頭の中に響く。そうだ、馴染むのだ、と思う。今までの吐き気や、異臭や、酷い景色、は馴染まないで、エゴを押し通した結果だったのだろうか?わからない、でも、思えば思う程、その様な気がしてくる。

 

そうであり、そうではないのだろう。なぜなら、そう思った途端、再び吐き気の予感がしたから。そんな風に、「解って」しまったら、「解る」という事によって、破戒されてしまう物があるのだ。「解釈」は恐ろしい。それに呑み込まれる事によって、大切な物が損なわれる。

 

気を取り直して、流木を両手でつかむ。砂浜に5センチ程埋め込む。砂浜、流木、自分、に一体感の様なものが生まれる。組成が変化し、何かが循環し始める。

 

 

 

2014.2.20

 

 

 

「高い壁9

 

目を閉じている。

 

ズボンの左ポケットに入っている鍵が熱くなる。車の音が更に大きく聞こえる。足の中が鍵の形に熱くなる。太ももの内部が熱くなる感じ。立ち上がる。

 

吐き気は相変わらずだが、空気や景色は、ごく普通の茅ヶ崎になっている。ゆっくりと、深呼吸をする。何度も何度も、深呼吸をして、息を整える。

 

恐る恐る、海の方に顔を向ける。もう、黄土色の空でも、浜でも海でもなく、冷たそうな、灰色の海が、曇り空の下に広がり、波打っている。それら全てが、グロテスクに見え、怯える。

 

だけどこの砂浜なら、降りて行っても、焼け死んだりしない筈だ。階段をゆっくり降りて行く、恐い。

 

吐き気を我慢しつつ、呼吸を整えつつ、海に向かって歩いて行く。つらくて立ち止まる。しばらくじっとしている。海に向かって行くのがキツい。海岸線を、角度をつけて、というか、ほぼ平行に歩き始める。江ノ島の方向に、ゆっくりと歩く。

 

何かが、抵抗するのだ。海に向かって、直線に歩くのは、ほとんど不可能に感じる。波打ち際に、平行に歩くのも、かなりキツい。立ち止まっているのも、何故か堪え難い。引き返す事は、考えただけで、パニックを起こしそうになる。

 

最も抵抗を感じられない方向に、ステップを踏む。遠くから見たら、狂った人が、めちゃくちゃに歩いている様に見えるかもしれない、時として真横に動いたり、グルグル回ったり。ダンスの様でもあるが、とてもゆっくりと、歩く。

 

迷路の道筋を、それも目に見えない迷路の道筋を辿るかの様に、砂の上を歩く、というより動く。吐き気が少し治まって来た。

 

目に見えない迷路の中を、迷うのではなく、正確に辿っていると、不思議と自由を感じる。

 

 

 

2014.2.19

 

 

 

「高い壁8

 

水が飲みたい。

 

気付くと喉がカラカラに渇いている。

 

子供の頃、消えてしまいたくて、もう食事などするまい、と思った事が何度もあった。でもその度に、空腹感に勝てずに、隠れてパンを握りつぶしながら食べた。空腹感に勝てない矛盾と、悔しさと、情けなさと怒り。泣きながら、泣いている事が悔しくて、泣いた。でも不思議と、食べると、気持ちが落ち着いたものだ。

 

水が飲みたいと思う。でも動けない。再び、汚れた海と、砂浜と、空と、そのばかばかしい広大さに、圧倒される。

 

歩道橋の上で、目をつむり、膝を抱える。ふと、車の音がする。さっきまでは全く聞こえていなかったけど、歩道橋の下を、車が通過して行く。耳に意識を向ける。

 

車の音が、よりはっきりと聞こえてくる、タイヤの「シャー」という音と、エンジンの音。ふっと空気が変わる。車は何台も通過している様だ。

 

悪臭がすうっと薄くなる。呼吸がしやすくなる。吐き気がひどく、膝をかかえて、目を閉じたまま、じっとしている。

 

 

2014.2.18

 

 

 

「高い壁7

 

進むにつれて、足がどんどんと重くなり、吐き気がしてくる。苦しい。立ち止まり、途方に暮れる。足、内蔵、頭、の全てが重く、地面の下に引っ張られる感じ。本来、歩いて十分程の距離だが、進めない。

 

海が美しくないのは分かっている。膝に手をついて呼吸を整える。理由は分からない、けど分かっている。無理矢理にでも海を見に行かなければならない、と思う。

 

交差点の手前で、思わず吐いてしまう、せっかく頂いた緑茶も。絶望する。身体がどんどん、下に向けて引っ張られる。涙が出てくる。信号が変わる。足を引きずる様にして歩き出す。

 

思った通り、海からは、異臭が漂ってくる。吐く物が無く、胃が痙攣を起こす。もう進めないかもしれない。情けないのと、異臭がもの凄く、目が沁みるのとで、泣きながら歩く。下水、糞尿の入り混じった様な臭い。

 

歩道橋にたどり着く。「ばかだ」と思う。自分は、ばかで、どうしようもない、ほんとうのばかだ、と思う。何の救いも無い。巨大な、広大な、汚い海の様な、手に負えないのがお前だ、と思う。

 

自分で自分に「うるさい」と言う。この目で、汚い海を見るまでは進もうと思う。胃はとっくにひっくり返っている。目が開けられない程、ひどい空気。歩道橋を四つん這いになりながら進む。「ひどすぎる」と思う、「ひどすぎるし、大きすぎる」、海も、空も、砂も、全てが黄土色に汚れている。橋の上に座り込む。砂浜まで降りたら、おそらく死んでしまうだろう。死にたいんじゃなかったのか?だけどこれでは、木星に放り出される様なものだ。ひどすぎる。

 

涙が目を守っている事に気付く。水が飲みたくなる。

 

 

2014.2.17

 

 

「高い壁6

 

海に向かって歩く。他の通行人や、自動車は、ごく普通に見える。自分だけが、足下の暗黒と繋がっているのだろうか?昔、下敷きの裏表を磁石で挟み、表の磁石に厚紙を切り抜いたスケーターを貼付け、裏側の磁石を手で動かして遊んだ事が思い出される。あるいは、下敷きに砂鉄を撒いて、下から磁石を当てて、動かして遊んだ事が思い出される。アスファルトの地面を下敷きにして、海に向かって歩く。一体、どちらが表で、どちらが裏なんだろう?

 

 

2014.2.16

 

 

 

「高い壁5」

 

歩いてみる。確かにアスファルトなのに、同時に、ガラス板の仕切りの様に、向こう側に宇宙の様な奥行きが感じられる。だけど、地面を掘っても絶対に土が出て来るだけだろう。そこには何も無い。限りなく表面的な所に、限りなく深い宇宙が存在する。

 

100%知っている、だけどそれは「知っている」のとは違う。蛍光灯の傘の裏に置いてあった、黒く錆びた小さな鍵を手に取る。アスファルトの上に落とす。普通に「チャリン」という金属音がするのと全く同時に、鍵が何かを突き抜けて向こう側へと落ちて行く。だけど、地面の上には、同じ鍵が、当たり前の様に残っている。

 

拾ってポケットにしまう。少し熱を帯びている様だ。暖かい。再び足が沈む様な感じがする、が、ちゃんと地面の上に立っている。鍵のお陰かもしれないと思う。足踏みをすると、確実に足下に広大な宇宙の様な広がりを感じる。

 

思い切り右足で地面を踏み込む、勢いを付けて。するとふくらはぎまで、向こう側に沈み込む。だけど左足はそのまま地面に立っている。右足を引き出す。少し熱を帯びている。

 

 

2014.2.16

 

 

 

「高い壁4」

 

外に出た。背後で木造アパートが崩れる。やはり、以前住んでいたアパートだった。細い砂利道が20メートル程先の、アスファルトの車道に繋がっている。道は向かって左側、海の方に向かって、下り坂になっている。真っ黒いアスファルトが普通の物ではなく、螺旋状の壁の中で、歩いたのと同じ、固くて、真っ黒い材質で出来ている。中に入って行けそうな、深みのある黒。ここは茅ヶ崎だよな?と思うが、そうであり、そうではない。道上に光か、風か、水の(だけど実体の無い)、薄い膜の様な物があり、反応して波打つ。

 

 

2014.2.14

 

 

 

「高い壁3」

 

見ると、食器戸棚の横に隣の部屋が通じている。雰囲気は似ているが、建物の構造は実家とは違う。足が沈まない様に、意識を保ち、部屋を覗いてみる。床の間があり、仏壇がある。マッチと線香が横に置いてあるので、仏壇に供える。やはり、おばあちゃんの写真が飾ってある。「チーン」と鐘を鳴らす。心の中に響き渡る様な、不自然な響き方。手を合わせて、祈る。何とも言えない暖かな感じがする。気付くと、正座をしている足が、畳に沈み始める。浸り過ぎてはいけないのだろう。ゆっくりと、立ち上がる。

 

自分の背丈が高くなっている。頭が天井に着きそうだ、何だろう?建物の高さが低くなって来ているのだろうか?周囲を見渡すと、目の高さに蛍光灯があり、埃の積もった傘の上に小さな鍵が置いてある。黒く錆びていて、握りが輪になっていて、鍵の「出っ張り」が一つしか無い。古くてとてもシンプルな鍵。

 

注意して見ると、襖の扉があり、階下に通じる階段が見える。以前住んでいたアパートに似ている。背が高くなって来てるだけではないらしい。自分が巨人化し、肥大化して来ている。手の中の鍵がとても小さく感じられる、ということは、手も大きくなって来ている。天井が更に近付いて来た。首を曲げなければならない。突き破ったり、建物を壊したりしたら、怪我をしてしまうだろう。同時に足も沈み始めた。ここに長居すべきでは無いのだろう。螺旋状の壁を思い出す様な、狭くなってしまった階段を、肩をこすりながら、降りる。そうは思いたくないけど、建物が崩れ始める。階段の先は、昔のアパートと同じ様なドアになっていて、そこから外に出た。

 

 

2014.2.13

 

 

 

「高い壁2」

 

押入れ、の様な、何とも馴染みのある暗さの中に居る。子供の頃に絵本や、本で読んだ、押し入れの暗さの中に居る。だけど子供に戻った訳ではない。襖の隙間から、光がもれて来る。そうっと開ける。畳の部屋。誰もいないが、ちゃぶ台の上には暖かい緑茶が茶碗に一つ置いてある。喉が渇いているので、頂く。とてもおいしい。

 

しばらく目をつぶって味わう。涙があふれて来る。ここでこのまま死んでしまいたいと思う。昔の実家の二階の様な雰囲気、どこかにおばあちゃんが居るのだろうか?四畳半に、ちゃぶ台、胸の高さの食器戸棚、蛍光灯。押し入れを背にして、立ったままお茶を頂く。とてもおいしい。誰が、淹れてくれたのだろう?母性的な何か?分からないが、何も解釈してはいけないと思う。お茶を味わい、聞き耳をたて、心を落ち着かせる。

 

畳は美しい緑色、緑茶の色と、香り、部屋そのものが、完璧な調和を成し、自分はただそこに居る。足元が沈み始める。ズブズブと、畳の中に、沈み始める。ぬかるみの様。「ダメだ」と意識を集中すると、再び足を引き出せた。浸りきって、ここに長くとどまり過ぎてはいけないのだろう。茶碗に残ったお茶を感謝して飲み干す。そしてちゃぶ台の上に戻す。

 

 

 

2014.2.12

 

 

 

「高い壁」

 

道を歩き続ける。地面は泥だ。緩い下り坂になっている。黄土色の土。辺りは深緑色の広葉樹が茂っている。深緑と言うよりも、黒に近く、泥に汚れた葉は全体的にあまり美しいとは言えない。道が左へとカーブする。カーブする際の「つき当たり」は壁の様になっている。汚い黄土色の土は糞を思わせる。「ニオって来るのでは」と心配になる。気温は今はそれ程高く無いが、日中(今は朝?)が心配になる。

 

進むにつれ、壁の存在が、ますます、大きくなる。白いコンクリートのレンガで出来た様な壁が、どんどん高くなり圧倒されそうになる。自分が螺旋状の泥の道を徐々に降りているのだろうか?左へ左へと分からない程度のペースで、道なりに進むにつれ、壁が高くなる。

 

徐々に光が届かなくなり、暗く、気温も下がって来る、冷たいぬかるみ。上を見ると、塔の様に高い壁の先には、太陽の光が当り、白く光っている、固くて、強くて、冷たい壁。さらに進む。もう木は生えていない。下の方が薄汚れた巨大な壁と、黄土色の土と、寒くなって来た光の届かない道。その道をさらに進むと、地面がだんだんと固く、ソリッドになって来る。暗くてよく見えないが、壁とは違う素材の、黒い石らしい。上を見ると、もう遠くの方に、青空が光って見えるだけ。ほぼ真っ暗な所に居る。だけど、不思議と心地よい、少なくともさっきまでの泥よりもずっと好きだ。

 

そして、道の幅もかなり狭くなる。もう壁と壁の間に挟まれていると言ってもいいだろう。暗黒の中、遥か上に見える青空。狭くなっている分、寄りかかる事もできる。まるで胎内のような、暗くて、落ち着く場所。

 

だけど、眠ってはならない、と思う。まだ進める、どんどんと進める。壁が狭かろうが、暗闇の中、無視して真直ぐに進むと、両肩、両腕に壁が「馴染む」。馴染んで、染み込んで行くのが分かる。目の前には、一人分の幅も無い、細い道があり、方向だけ示すかの様に続いている。その方向に、自分は壁に「馴染み」ながら、あたかも「カン切り」のように、壁を切りつつ進む。

 

壁というのは、この様に、螺旋状に、角度をつけて、徐々に抜けるのか、と思う。そして、それは、実際には「抜ける」のとは違うらしい。なぜなら、そこは螺旋状の中心を(形の上では)とっくに通り過ぎてしまっているから、それはもはや、壁ではない。

 

自分は「壁の中」に居る、とも言える。とても親密に感じる壁の暗黒の中を「螺旋状」に歩いて行く。物理的には不可能(螺旋が続くのが)な筈なので、上方に、それも「別の上方」に向かって、歩いているのだろうか?いや、坂を上る感じが(下る感じも)しないので「あぁ、壁を抜けているのだ」、と思う。

 

そのまま歩いて行く、時間をさかのぼっている様な気がする。

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